2001/04/25
ギター購入に関する話
 

 先月、長い間使っていたタカミネのエレキ・クラシックギターが壊れてしまった。ライブでちょっと荒い弾き方をしたらボディの中の力木が折れて雑音が入るようになってしまったのだ。
 楽器屋に持って行って修理の見積もりをしてもらったら幸いちゃんと直るそうなので依頼したが、これを機会にまともに生音の鳴るクラシックギターを購入することにした。

 ピエゾ・ピックアップで増幅された音にもういい加減嫌気がさしてきたからである。

 タカミネを買った時はまだドラムやエレキベースの入ったバンドをやっていたのでピエゾはどうしても必要だったが、今はソロやデュオがメインなので使う理由もなくなってきた。ましてボサ・ノバやフュージョンを弾いているならともかく、クラシック・ギターのスタイルならなおさらである。

 しかし、前にもどこかで書いたと思うが、クラシックギターを買うというのはなかなか苦労するものである。ホールでコンサートをするようなクラシックギター弾きの人なら何百万という銘器を普通に使っているが、こちとらライブハウスである、そんなものははっきり言って必要ない(誰かくれるというのなら勿論喜んで頂くが)。そこそこの値段で、弾きやすくて音程が正確でまともに鳴る楽器なら十分だ。でも、「そこそこの値段」では、この最低限の条件さえクリアできない物がほとんどなのだ。

 手工ギターの最低価格のラインが20万円台だが、弾いた実感としては量産ギターの程度の良い物と大して変わらない気がした。しかも、専門店でも在庫が揃っていないことが多く、取り寄せてもらってから試奏、という面倒な手間をかけなければならない。楽器店を回ってあれも駄目これもイマイチ、と色々試奏しているうちにすっかりくたびれてしまった。ある楽器店のクラシックギター専門フロアでは、店員に「そこまで(楽器のことが)わかってらっしゃるんでしたら、もっと上の価格帯の物を探されてはいかがですか?」と嫌みたっぷりに言われたりした。まあ、確かにそれは正論なのだが、こっちにだって都合ってもんがあるんだよ。そもそも店員に気に入られるために買い物に来てるんじゃねえ。

 結局ヤマハのGC-31Cというクラシックギターを購入した。この春出されたばかりのニュー・モデルである。トップは米杉単板、サイドとバックはローズ単板、指板は黒檀というスペックだ。杉のギターは柔らかく温かい音がするので前から欲しかった。弾き味も軽快である。価格は12万円なり。他メーカーのもっと上の価格帯のものやスペイン製のギターも試奏してみたのだが、あちこちの店を回って30本以上弾いた中で、これが群を抜いて良い音で鳴ったのだ。ヤマハだけど、仕方ない。っていうか、他のギター専門メーカー、もっとがんばれよ。

 しかし長い間エレアコを弾いていたせいか、ずいぶんと弾き方が乱暴になっていたようだ。新しいギターを(音の響かない)自室で最初に弾いた時「あれ?音が小さいな」とかなり戸惑った。しまっただまされたかやっぱりヤマハだし、とずいぶん落ち込んだが、基本に戻ってデリケートに弾く事を心がけつつ練習しているうちにやっと楽器の鳴らし方を思い出してきた。ギター弾きに転向して最初に近所のギター教室に習いに行ってた時は、そういえばいつもこういう風に弾いていたんだっけ。気を付けていないと知らぬ間にずれていってしまうものであるなあ。

 今ではすっかりこのギターが気に入っている。ついでにフォームやタッチも修正して、とてもいい感じである。今まで宅録した音源も全部録り直したくなったな。


* * *


 余談だが、私の通っていたギター教室では楽器購入に関してこういう事を言っている。「車一台くらいの値段なら安いもの」らしい。私個人の考えでは、初心者にいきなりそんな高い物買わせてどうするんだよ、と思う。「信頼できる先生に選んで頂きましょう」とか言って、要するにこの教室のショップで買いなさいという・・・いやいや、これはうがちすぎかな?でもオバサンの生徒なんかどんどんラミレスだのなんだのと100万円くらいの楽器買ってたし、発表会(1回だけ参加し、まともにクラシックの曲を弾いた。以後出る気がしなかったし何故かお呼びもかからなかった)のプログラムにはそれぞれ使用楽器まで書いてあって、どうも高い楽器を競わせて買わせているような・・・いやいや、考えすぎだろう。でも俺の「使用楽器」欄は空白になっていたな。何でだ?
 実際、キンキラキンの服を着たオバサンの生徒が私の楽器(タカミネ)を見て「アラ!そちらはメンヒ?それともブーシェかしら!」 と言って話しかけて来たのには正直びっくりした。その直後にオバサンはサイドに付いたイコライザーを見つけて凍り付いていたけどね。
 
 この教室については他にも、「プロになる」というのがすなわち「この教室の先生になる」という意味だったり教本の表紙に「最良の指導書」とでかでかと書いてあったり張ってある表彰状が全てその教室内部(全国展開しているので大きな団体ではあるのだが)の賞だったり町のあちこちに醜悪な看板を張り出しているのでレッスン中に苦情の電話が来たり、色々ツッコミを入れたくなる所はあるのだが、とにかく私はそこに2年半通い、ギターの基礎はしっかりと学ばせてもらった。




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