2001/04/30(月)雨
井の頭報告
雨なのに なんかこう過ごしやすいのは なぜ
傘さして わざわざ出かけてみようとして やめて
何年か前にギター弾き語りアレンジの仕事で奥田民生のこんな曲を手がけたことがあった。
楽譜の仕事で関わった曲は2、3日経つときれいさっぱり忘れてしまう場合がほとんどである。しかし私はユニコーン時代からの奥田氏のファンなので、春から初夏の雨ふりの日にはこの曲を思い出し、しみじみとコーヒーを飲んだりしている。
でも今日は傘さしてわざわざ出かけてみた。暇なのだ。
世間は大型連休に突入したが、さすがにこの天気では出歩く人も少ない。
久しぶりの井の頭公園は、圧倒的なほどの新緑で埋め尽くされていた。
木々は思う存分枝を伸ばし、歩道は所々緑のトンネルのようになっている。
前を女の二人連れが歩いていた。眼鏡をかけた女と眼鏡をかけていない女だ。
眼鏡をかけていない女は何か悩みがあるようで、うつむきながらとぼとぼと歩いていた。眼鏡をかけた女が励まそうとしているが、彼女が一生懸命になればなるほど眼鏡をかけた女は元気を無くしているように見える。
井の頭公園では女同士の二人連れはよく見るが、男同士というのはあまりいない。
それに対し、以前高尾山に行ったときは男同士の二人連れがたくさんいた。なぜだろう?
橋の上から池を見渡すと、岸の枝が重そうに垂れ下がり、水面は雨で煙っている。まるで山の中の小さなみずうみのように幻想的だ。
ふと足下に目を移すと、水面の下で何かがうごめいているのが見えた。夥しい数の鯉の群が、互いに折り重なりながら一斉に上を向いて水面ぎりぎりの所で口をぱくぱく動かしている。五十匹以上はいるだろう。餌を撒いているわけでもないので、これはおそらく水中の酸素がたりないのではないだろうか。
皆揃って30センチ前後の若い真鯉で、体が黒いので上から見るとぱくぱく動く口だけが無数の白い輪のように浮き上がり、それがひと固まりの群生生物のように見えてなんとも不気味だ。じっと見ていると吸い込まれそうになってきたのであわててその場を離れた。
「ドナテローズ」から公園へ降りる階段の両脇に、不格好な丸太の木枠(手すりには見えないので、多分ただの枠だろう)が組まれ、ばかでかい植木鉢が置かれていた。
ここにはよく絵はがきとか手作りのアクセサリーを売る人たちや、訳の解らないガラクタを売るおじさんなどが店を出していたのだが、どうやらここから彼らを閉め出すためにこんなものを置いたらしい。
付近の歩道の脇にも、すばらしい新緑の風情にはおよそふさわしくない、工事用のコーンに黄色と黒の縞のロープが張られていた。公園の管理者は、本気でフリーマーケットの人たちを追放するつもりなのだろうか。
便宜上「フリーマーケット」と言ってはいるが、ここでものを売る人たちは自然発生的に集まってきて、てんでに店を出しているだけである。ロープを張ったくらいで彼らがいなくなるとは思えないし、管理者も建て前でやっているのだとは思う。しかし最近ずいぶん売る人の数が増えてきたし、業者風の人間もちらほら見かけるようになった。閉め出されはしないとしても、そのうち誰かが出しゃばってきて仕切ったりするかもしれない、という気はする。
ま、私にはどのみち関係のない話なのだが。
ただ、もしそんなふうになれば、休日の井の頭公園からはますます足が遠のく事になるだろう。
駅へ向かう道の途中の「井の頭不動産」があった所に、アイスクリーム屋が出来ていた。
いつもここで物件をチェックするのが習慣だったので、愕然としてしまった。
よく見たら不動産屋は裏のアパートの2階に移転していたが、もう通りがかりに覗くというわけにはいかない。
2001/05/18(金)晴
サドルを削る
もうすでに初夏の日差しだ。今日は渋谷まで買い物に出かけた。 平日なのにさすがに人が多い。駅前の交差点を渡っている途中、向かいから走ってきたサラリーマン風の男と肩がぶつかった。思わずよろけてしまうほどの強さだった。振り返って文句を言ってやろうとしたのだがそいつはさっさと人混みに消えてしまっていた。ゴキブリ並みの素早さである。
やだねー、あくせく生きている連中は。
気を取り直して前を向いたらいつの間にか信号が赤に変わっていて、周りには誰もいなくなっていた。道路の真ん中で激しくクラクションを鳴らされ、あわてて「すんません、すんません」と謝りながら歩道へ逃げた。全く油断のならない世の中である。
東急ハンズでやすりを4種類と万力を買い、ジーンズメイトで新しいジーンズを買った。明治通りを通って新宿まで歩き中央線で吉祥寺まで行き歩いて家に帰ったらとてもくたびれた。
この頃長時間ギターを弾いているとやけに左手が疲れる。弦高を測ってみたら、以前の楽器に較べ12フレットで1mm近く高かったので、サドルを削って弦高を低くした。 ついでに2弦のピッチが少々気になっていたので、2弦が当たる部分の山を逆方向に削り、わずかだが弦長を長くしてみた。
結果、以前より格段に弾きやすくなり、ピッチもほとんど完璧なまでに安定した。試してみるもんである。
新しい牛骨サドルは、一部ゾナーソウを使って削ぎ切った。全音ウクレレキットやサルテリーを作った時の経験が、多少なりとも役に立ったようだ。