2002/04/14(日)晴れ
井の頭報告

 流行には、疎い。

 相も変わらず着る物には無頓着だし、雑誌も読まないし、外に遊びに出たりもそれほどしないので「流行のファッション」「最新のデートスポット」なんてのも知るわけがない。
 CDすら滅多に買わない。音楽くらい最先端のものを知っておくべきだとは思うが、だいたい混沌とした今の時代、「これが新しい」なんてのは私には皆目わからなくなってしまっている。
 相も変わらず、ビーチボーイズを聴いている。好きなプロレスラーは西村修だ。時代から全く取り残されていると言えよう。もっともこれは子供の頃からの性向なので、別に私が年をくったから、という事ではないと思う。

 さて先日、初めて出演したライブハウスからの帰りに、対バンのメンバーだったバリトンサックスのY君と、この日はお客さんで来てくれていた三味線・ベース弾きのU君と一緒に井の頭線に乗った時の話である。
 少女向け雑誌の吊り広告の大見出しに「セシル・マクビー大研究」と書いてあったので、これはすごい、少女雑誌のグラビアにベース抱えたセシル・マクビー登場か(*)、などと馬鹿な事を言っていたら、他にも「ボヘらなくてもおしゃれは出来る!NOTボヘミアン派のためのファッション」などという非常に興味深いコピーが書かれているのを発見した。
 どうやら世の中はボヘミアンファッションというのが流行っているらしい。
 しかし具体的にそれがどういうファッションなのか、少女ではない我々にはわからない。結果、U君がちょっとだけ民族っぽい感じの服を着ていて、しかもサンダル履きだったので「これがボヘミアンじゃないの」「おーボヘってるじゃん」「なるほどこれはボヘってる」「俺らNOTボヘミアン派」などと勝手に盛り上がった。

 この「ボヘミアンファッション」だが、その後ネットで調べてみた。でもやっぱりどうもよくわからない。
 いわく、
「昨年からヒッピー、ジプシー、ウエスタンなど60、70年代のボ ヘミアンファッションが若者に再流行し始めた」
「ムートンやファーのアウターを用いたボヘミアン風のスタイル」
「・・・こうしたかわいらしいブラウスをジーンズ、あるいは民族衣装ふうのものなどとミスマッチの組み合わせで着るのがこの春の流行で、”ロマンティック・ボヘミアン”あるいは”ロマンティック・フォークロア”と呼ばれている。ちなみに、70年代ヒッピーふうのテーストを取り入れたものが”ロマンティック・ボヘミアン”で、もっと民族衣装の色が強いもの、あるいは北欧調のものを”ロマンティック・ボヘミアン”と分類するという説もあるが、明確ではないようだ。」
「”プリティーガール”(TBS系)制作発表での稲森いずみさん(中央)も”ロマボヘ”コーディネート」

 これでは分かるわけがない。分かるものか。「ロマボヘ」なんていうさらに恐ろしい言葉まで出てくるし。

 今日久しぶりに井の頭公園を歩いてみたのだが、ボヘっている、と明確にわかる女の子はあまり見かけなかった。
 時々、ゆったりとしたスモックブラウス(?)を着ている人を見かけたが、どういうわけか皆年齢層が高めで、おそらくは体の線を目立たなくする目的の方が主なのではないか。他にも、ジーンズの上にひらひらしたフリルっぽいスカートを履いている女の子なんかがいたが、いずれにせよごく少数派だ。吉祥寺ではNOTボヘミアン派が主流なのだろうか。
 あるHPによると、「東京の街でもフォークロアやボヘミアンルックが登場し始めている。ただし装い方はやはりさまざま。民族調のベルトやアクセサリーだけでそれとなくアクセントをつけている女性も多い。」ということなので、「これがボヘミアンだ」と明確に言い切れるほど分かりやすいものではないのかもしれない。
 「白いダッフルコート」や「ひまわり柄」が流行った時代が懐かしい。

*     *     *

 話は変わるが、公園外れの井の頭線の線路下の橋桁にあった張り紙の文章を紹介しよう。

この付近は、通路ですので自転車等は、
通行の支障になりますので、置かない
で下さい。

                   東京都建設局西武公園緑地事務所

 読点の付け方のセンスが絶妙だ。私もぜひこういう、文章を見習いたいもの、である。



 *そういう名前のジャズベーシストがいる、というだけの話です


2002/04/15(月)曇り
西武多摩川線に乗る

 思い立って武蔵境駅から西武多摩川線という路線の電車に乗ってみた。特に理由はない。たった6駅しかないこの路線が、前から何となく気になっていただけである。

 ひとつ目の「新小金井駅」を過ぎたあたりから景色が良くなる。緑が多い。すぐ近くにこんな場所があったとは意外である。しかもこの路線、単線だ。
 「競艇場前駅」を過ぎて終点の「是政」まで乗ってみたが、この辺は面白味がなさそうだったのでそのまま折り返し、「多磨駅」で降りた。
 道路がだだっ広い。駅から少し歩くと「武蔵野の森公園」というのがあった。野球場ほどの敷地に芝が植えられている。周りに建物は無く、空き地になっていて、背の高い雑草がのび放題になっている。「立入禁止・公園事業予定地」という立て札があったので、まだこれから拡張・整備されるのだろう。
 二組の若いカップルがサッカーボールを蹴ったりキャッチボールをしていた。平日なので、がらんとしている。小学生の男の子が二人自転車でやってきて、ベンチに座るとおもむろにゲームボーイを始めた。
 公園の外れまで歩いて小高い丘に登った。風が強い。べらぼうに強い。辺りの木はまだ植えられたばかりの若い木ばかりなので、風にあおられてひゅんひゅんとけたたましい音を立てている。眼下に飛行場があった。ヘリコプターや小型飛行機が停められている。しばらく眺めていたが、風のせいか離発着は無さそうだ。サーチライトだけがチカチカと光っている。私と同年代の男が二人ほど、自転車に跨ったままぽつんと立ち、やはり同じように飛行場を眺めていた。空はどんよりと曇っている。こうして見るとなかなか非日常的な風景で、気に入った。ここには時々来ることにしよう。
 帰り道、駅方面に歩いていく途中に東京外語大があった。新しく出来たキャンパスだろうか、広くて明るくて綺麗だ。こういう学校に行きたかった、と思う。私の出身校ときたらまるで団地みたいだったものな。
 外語大の向かいに、フェンスで囲われた広大な敷地があった。一見すると林のようだが、もとは何かの施設だったらしい。フェンス越しに建物も見えた。ツタがからまり窓が割れ、完全に廃虚になっていた。
 廃虚は非日常的なので、大好きだ。また見に来よう。

 駅で外語大の女子学生を多数見かけたが、ボヘっている女の子はやっぱりいなかった。何故だ?




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