2002/07/05（金）
サイレントギターを予約注文した

　この厳しい日本の住宅事情にあって、音楽をやっている人間が必ずぶつかる問題が「ふだんの練習場所をどう確保するか」である。
　公園や線路のガード下で練習したり、防音ブースを頑張って買ってアパートの部屋に持ち込んだり、わざわざ大きな河原のある土地に引っ越す者もいる。
　幸いにして私は管楽器や打楽器と違い比較的弱音であるガットギター弾きなので、普段の個人的な練習は家で出来る。というか、近所迷惑なのは分かっているが他に方法も無いし今の所苦情も来ないので、させてもらっている。
　しかし生音を出せるのはやはり昼間に限られてしまうし、例え昼間でもラスゲアードなどの激しい奏法を練習するのは気が引けてしまう。また時間的にも、練習できるのが昼間限定というのは不便なものである。

　先日、たまたま楽器屋の店頭に展示してあったヤマハのサイレントギターというものを試奏してみた。
　こんなもん、と馬鹿にしていたのだが、これが結構弾きやすく、通常のクラシックギターを弾くのとあまり違和感がなかった。ヘッドホン出力の音はまあそれなりのものだが、練習用と割り切れば悪くはない。
　6万円というお値段と、予約注文のみで入荷するまで3ヶ月待ちという事だったので、この日は面倒くさくなって放り出してきたが、そろそろ限界のような気がしてきたので今日楽器屋に電話して注文した。うまく行けば9月になる前に入荷するらしいが、さてどうか。

　そうそう、他のメーカーからもこの手の楽器は以前から発売されていたが、今まであまり見かけた事はなかった。しかしヤマハのサイレントギターが人気で品薄なので、便乗して売ろうというのか、この頃店頭でも見かけるようになった。値段も3万円位と安い。これも試奏してみたが、私にはまったく合わなかった。クラシックギター代わりではなく、全く別の楽器と考えた方がいい。ていうか、弾きづらいし音はしょぼいし、取り柄というのが全く分からない。使えるのならこっちが欲しいと思っていたのに、全くがっかりだ。手が腐るかと思ったじゃねえかよ、タコ！他のメーカーがちゃんとした物作ってくれれば、俺もヤマハなんか買わなくて済むのに。

2002/07/11（木）
BGM

　近頃めっきり聴かれなくなったが、スーパーの魚売場でしょっちゅうかかっている「魚魚魚、魚を食べると、頭頭頭、頭が良くなる」というあの歌、ひと頃は魚売る所みなこればっかりで、本当にうんざりしていた。何年か前のダンゴなんたらよりはまだましな曲だとは思うが、ああいうのはひっそりとした存在であるべきであって、世に知られてしまうととたんにつまらなくなってしまうと思うのだが、どうだろう。
　私は小さい時分肉が嫌いだったので、タンパク源といえばもっぱら魚だったが、そのおかげで頭が良くなったとはとうてい思えない。私は海のない県の出身で、しかもそれほど育ちも良くないので、魚と言っても食べていたのは干物ばかりである。しばらくの間「魚とはしょっぱいものだ」と思いこんでいたくらいだ。頭が良くなるどころか、おかげで辛党の酒飲みになってしまった。だからあんな歌で子供を騙してはいけない。

　私のよく行く近所の「丸正」というスーパーでは、幸いこの歌は一度もかかった事がない。
　そのかわり、ここの魚売場ではいつ行っても「ヘイ・ジュード」がかかっている。魚売場の人がビートルズ好きらしい。それはいいのだが、問題なのは、かかっているのが何故か後半部分の「ラ〜ラ〜ラ」という所だけで、フェイドアウトするとまた「ラ〜ラ〜ラ」の最初の所へ戻って、これがエンドレスで続くのである。わざわざこんなテープを作ったらしい。聴いてみれば分かると思うけど、これはかなりくたびれる。何を考えているのだろう。
　数メートル先の肉売場では子供の歌声の季節の童謡（今は、「夏は来ぬ」や「我は海の子」）がかかっている。同じ店内で、かなり世界観が違うようである。

　さすがに評判が悪かったのか、魚売場の曲は二、三日前から「レット・イット・ビー」に変わった。これもかなり、切ない。

2002/07/26（金）晴
悪い事を忘れる性格

　楽器屋からサイレントギターが入荷したと連絡があったので、受け取りに行った。予定よりずいぶん早いが、そこはそれ「名前を利用させてもらった」といったところだろうか（嘘。私にそんな力は無い）。

　渋谷駅から歩いて店まで行って楽器を受け取り、また駅の方へ戻った所で腹が減ってきた。そういえば今日は昼飯を抜いている。暑いし、冷たいソバでも食べようと思い近くの立ち食いソバ屋に入った。
　ここで「冷やしタヌキそば」というのを食べた。しかし、これがとんでもない代物で、麺もつゆも生ぬるいし揚げ玉は石油のようなにおいがするし、とても食べられたものではなかった。いくら立ち食いとはいえ、これはひどすぎる。店内には10人ほどの客がいたが、やはり皆とてもまずそうに食べている。しまった、まずいものマニアの店だったか。
　店を出て店頭のサンプルを見ながら、「このサンプル（旨そうに見えた）と300円って値段に騙されたんだよなー」と思った途端、数年前にもこの店に入った事があって、その時も同じ様に後悔したのを、今更ながら思い出した。

　私は割と悪い事や嫌なことはすぐに忘れてしまう性格なのだが、憶えていた方がいい悪い事も、世の中にはある。