2002/10/07(月)曇り
井の頭報告
この秋、私は詩人である。
そう言うと大げさだが、つまりは、歌もののユニットを始めることにしたので、自分の曲に歌詞を付けるべく言葉を探しまくっている日々なのである。
以前読んだ村上春樹の本に「文章を書くには、何を書くのかというテーマと、それを表現するスタイルが必要だ」と書いてあった。確かに、小説を書く時のような場合に限らず、音楽を作る時にも応用できそうな考え方である。
私の場合、曲ごとに書きたい歌詞のテーマというか、コンセプトは何となく、ある。しかし、私の文章のスタイルは、ここの今までの記事を読んで頂ければ分かるとおり、ハードボイルドである。このような文体というのは、なかなか歌詞になりづらい。
形式にしばられず、余計な事を考えないでてらいの無い言葉がすらすら出てくればそれが一番なのだが。テクニカルにやろうとしてもどだい無理だし。
でも、いいのだ、チャレンジするのだ。歌ものというのは、今までやりたくてずっと出来ないでいた。すばらしいメンバーも見つかった事だし、私自身も今のまま固まってしまうのはまっぴらだ。状況がホットなうちにやるのだ。
今日は変な天気だ。昨日から強く湿っぽい南風が吹き、蒸し暑い。朝は雨が降っていたのにその後晴れ、今はどんよりと曇っている。
井の頭公園に着くと、まだセミが鳴いていた。盛大に鳴いているという訳でもないが、一匹や二匹でもない。ヒートアイランドの影響だろう。
足下には強風で落ちた木の葉が多く落ちていた。木々の葉はまだ青く見えるが、落ちた葉はみな黄色く色づいている。紅葉の進み具合は、まだその程度だ。
色々な人が、色々な動物を散歩させていた。イタチを散歩させている若者や、ポケットモンキーを連れて歩いているおじさんなど。
派手な服を着たよく肥ったおばさんが、毛の短い、目のぐりぐりした小さく貧弱な犬を抱えて歩いていた。犬を歩かせてないので、これは「犬の散歩」とは言えないであろう。おばさんの口は大きく、犬歯がむき出しになっていたので、家に持って帰った後あの犬食うんじゃないかと思った。
セミが一匹、飛んでいる途中で力つきて舗道に落ちた。拾い上げると、小刻みに震えながら「ジジッ・・・」と弱々しく鳴いた。
哀しくて、いとおしくなる。
例えば、こういう身近に起こった事を集めて歌詞が出来ないものだろうか。
猫は、なつかない。
セミは、落ちた。
今ひとつだな。
2002/10/08(火)雨
井の頭報告
この夏に頭を坊主にして以来、通りがかりの人に道を聞かれたりする事がなくなった。人相は少し悪いくらいの方が過ごしやすいと、実感している。
今日は、夕方に雨の降る中吉祥寺へ出かけ、タワーレコード前のベンチに傘を差して座り、通りを歩く人々を眺めながら2時間ほど過ごした。
ひとりひとりをちゃんと見ていたわけではなく、人が流れていくのを何となく、映像として眺めていただけである。特に何の目的も意味も無く、ただそう過ごしてみた。ぼんやりと記憶している限りでは、大人達はつまらなそうな顔で、若者は何も考えていないような薄ら笑いを浮かべて歩いている人が多かったような気がする。
帰りにハモニカ横丁の魚屋で小鯵の煮干しを買い、家に帰ってから店のおばさんのすすめに従って鷹の爪と共に酢に漬けて即席の南蛮漬けを作った。
簡単な割にはなかなか美味しい。酒のつまみにぴったりである。